今回の記事では、前回に引き続き英語レベル上級者向け(750~860ステージ前半)の学習法について学会での論文の発表を続けながら、大学や企業向けに英語研修を提供している鈴木武生氏に話を伺った。

 

下記は講師・鈴木の見解です。

まず(1)ですが、これは映画やドラマが役に立ちます。例えば部下が上司に謝る場合、「すみません、以後二度としないよう気を付けます」と言うがこれを英訳することは難しいでしょう。普通は"I am terribly sorry. It won't happen again."と言う。"Sorry, I won't repeat it again."と言うと意図的にくり返すように聞こえるかもしれません。こうしたものは作文レベルを超えて、一つの慣用的口語表現として覚えるしかありません。現在ではさまざまな映画スクリプトが出ているのでこれを対照しながら勉強するとよいでしょう。また字幕付きであればテレビドラマもよいです。個人的にはテレビドラマのほうが現実生活に近いものが多いので有用な表現がより多く学べると思います。

 

次に(2)ですが、これは「読む、聴く、書く、話す」の4技能すべてにかかわります。

例えば、米中の貿易戦争の話をしている場合、「アメリカは中国に最恵国待遇を認めないかもしれない」とか「アメリカは中国のさまざまな非関税障壁を非難した」と言いたい場合にはどう言えばよいでしょうか?

こうなるとまず単語の時点でお手上げになります。最恵国待遇は#MFN(most friendly nation) status"、非関税障壁は"non-tariff barriers"ですが、これだけでも文は作れません。前者では"grant A to B(認める)"という連語と組み合わせて使える必要があり、後者は「さまざま非関税障壁を設けていることに」と言い換え、"erecting various non-tariff barriers"とし、さらにこれを"accuse A of BABについて非難する)"に組み込む必要があります。

でもこんな早業を会話の現場でやれと言われても土台無理でしょう。そのためにはこうした背景知識に関連した表現を事前にリーディング(や場合によっては映像ニュース、テッド、映画、ドラマ)などからインプットしておく必要があります。

 もっと日常的な内容でも同様です。「バスケやっていた時、ボールが変に指に当たって複雑骨折した」などもかなり瞬間翻訳は難しいでしょう。

少なくとも「複雑骨折する」が"have(give ) a compound/complicated fracture"という知識は必須です(複雑骨折の反義語はsimple fracture)。これを文にすると"I was playing basketball, and the ball hit my finger wrong, giving me a compound fracture."という形で表現できます。

また今日憲法改正議論が盛んだが、では「それは憲法の範囲を超えるかもしれない」とはどう言えばよいでしょう。「憲法」をより具体的に「合憲性(constitutionality)」と言い換え、「~の限界を超える」という高度な連語表現(overstep the limits/boundaries of)を使って"That may overstep the limits of constitutionality."と表現します。

こうした知識はすでにTOEICテスト用などの学習教材では対応が不可能であり、実際のディスカッションで誰かが使ったのを覚えたり(そうした機会への積極参加が条件)、読書から入力しておくのが唯一手早く確かな方法なのです。

 

鈴木 武生(すずき たけお)

元商社マンから日本語教師、翻訳者、通訳者、辞書編纂者を経て独立。東京大学大学院博士課程修了、Ph.D(言語学)。英日中の意味論、構文論、語用論。タイヤル語の文法記述
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。 https://asiaeuro.org/ 

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「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人とコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したら良いのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか。」という思いで設立。代表として企業語学研修を中心とし、日系・外資を問わず、またあらゆる業種の企業に対し、学習者の語学力向上をサポート。

 

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