企業の⼈事担当者には、実施した日本語研修でどのぐらいの効果があったかを検証することが求められます。目標設定の仕方や研修効果の見せ方など、具体的な方法をご紹介しましょう。

 

何が達成できたら「研修の効果が見られた」と判断するのか

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日本語研修の「入口」で目標を明確にし、研修を始めたとして、次に気になるのは「出口」、つまり、何が達成できたら研修の効果があったと判断するのかという評価を行う部分です。最終的な成果物が形で見えるもの、数値で測れるものなどであれば、達成度は見えやすいでしょう。しかし、語学力の場合、はっきり形では見えないことが多く、研修効果を実感しにくいということもあります。効果的な評価をするために、まずは押さえておきたいポイントを考えてみます。

 

そもそも評価は何のためにする?

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「評価」というと、点数をつけて、合否判定や順位付けに使われると考える人も多いでしょう。そう考えると、「評価」は嫌なものと敬遠されがちですが、見方を変えると、それまでの学習でどれだけ自分の力が伸びたのか、どのような学習法が効果的なのかを探るためのデータであると捉えることも可能です。そのデータは、受講者に今後の学習ヒントを与えてくれるとともに、研修実施者にとっては受講者のやる気を引き出すフィードバックをするための貴重な資料にもなります。それが、本来の「評価」の目的だと言えるでしょう。

 

研修効果の評価は2つの観点から

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日本語研修が効果のあるものだったのかどうかを評価するには、2つの観点から見るとよいでしょう。1つは受講者の力の伸び、もう1つは目標に対する研修内容の妥当性です。

前者は、受講者がどこまで力を伸ばすことができたかという観点で行うものです。一般的には、研修修了時点に到達度テストを行い、受講者の得点で効果を測定する方法があります。ただ、単語や文法といった言語知識を測るのであれば、このようなテストも有効ですが、語学の場合、言語知識量だけではなく、それらを運用してどれだけうまくコミュニケーションを取ることができるのかといった言語運用能力を見ることも必要です。そのための評価も視野に入れることが大切でしょう。

一方、後者は、その研修内容が目標に対して適切であったかという観点から行うものです。受講者へのアンケートや聞き取り調査などを実施して主観的に評価してもらうことも有効でしょう。さらに後述のルーブリック評価を援用し、より客観的に効果を検証する方法もあります。

「何が達成できたら、その研修は効果があったのかと判断するのか」は、このように複数かつ双方向の観点で見ていく必要があります。

 

わかりにくい効果を見えやすくする評価の方法

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語学力の場合、家のリフォームの「ビフォー・アフター」のように、効果が見えやすい形で現れることは少ないでしょう。では、その「見えにくい」効果を可視化するにはどのような評価法があるのでしょうか。ここでは、近年、学校教育や語学学習の場面で取り入れられている評価法を紹介します。

 

ルーブリックで「見える化」

「ルーブリック」とは、到達目標を、評価観点と尺度を組み合わせ、マトリクスの形として表したものです。
※参考:グローバル教育気になるキーワード ルーブリック(G-Dduhttps://www.core-net.net/g-edu/issue/6/

例として「プレゼンテーション」を評価する場合で説明しましょう。
まず、縦軸には「評価観点」として「内容」「目線」「発音の明瞭さ」「声の大きさ」「図表の使い方」など、評価するときに注目する項目を細分化して記入します。

次に横軸には「ABCD」などの尺度(レベル)を記入します。そして、交差するマスには、それぞれどの程度のことが達成できていたら、そのレベルと判定するのか、その基準を簡潔な文章で記します。例えば、「目線」の観点であれば、A(最高レベル)には「聞き手とアイコンタクトをきちんととり、手元の資料は見ていない」、B(2番目のレベル)には「聞き手とアイコンタクトはとっているが、頻繁に資料に目がいっている」といった具合です。

このルーブリックにより、見えにくい効果を客観性をもって可視化することができるようになります。また、受講者と共有することで、達成目標がわかりやすくなり、モチベーションの維持にもつなげることができます。観点の項目設定と基準の記述文の作成がポイントになりますが、何を評価するのかを、ほぐし分けてステップ・バイ・ステップで示すことは、研修内容を考える時にも役立つでしょう。

 

ポートフォリオ~途中経過を蓄積する

もう一つ、近年、注目されているのが「ポートフォリオ」です。ポートフォリオはもともと「紙ばさみ」「書類入れ」といった意味の言葉です。ここでは、研修や学習の記録や成果物(書いたもの、レポート、テスト結果など)をファイリングしていくことから名づけられた評価法のことを指します。

従来の評価では、最終結果だけが注目されがちでしたが、ポートフォリオは、逐次的な評価を行い、途中経過にも目を向ける点に特徴があります。記録を蓄積していくことによって、どれぐらい伸びや変化が見られたのかが可視化され、振り返ることによって、次に取り組むべき課題の発見にもつなげる効果があると言われています。

 

研修内容の振り返りをしやすくするために

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今回は、研修効果を可視化する方法を紹介しました。最終的な数値だけではなく途中経過に注目したり、評価の観点を細分化したりすることで、効果が見えやすくなり、受講者の満足感や達成感にもつながりやすいでしょう。研修提供側としても、研修内容の振り返りがしやすくなる効果もあります。取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

執筆者:青山美佳
フリーランスライター・編集者 
成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。
主に、外国人の日本語学習、言葉とコミュニケーションにかかわる分野を中心に、日本語能力試験の問題作成・テキストの執筆、取材・記事執筆、編集・校正、文章添削などを行う。

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