日本語研修の受講者が漢字圏出身なのか、非漢字圏出身なのかによって、その内容も到達目標も異なってきます。その違いを押さえた上で、それぞれどのような研修内容を提供したらよいのかご紹介いたします。

 

漢字が大きな障壁となる受講者がいる

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日本語学習において「漢字」は大きな壁の一つです。特に母語で漢字を使わない「非漢字圏」の人にとっては、母語で漢字を使用する「漢字圏」の人よりも、その壁は高く、習得には相当の労力と時間がかかることを理解しておく必要があります。また、漢字圏の人であっても、使用する文字の字形が違ったり、その語の持つ意味が日本語と異なることがあることも知っておくべきでしょう。今回は、漢字圏、非漢字圏の受講者に対して、企業はどのような研修内容を提供したらよいか、注意すべきポイントなどについて考えてみます。

 

漢字圏出身者、非漢字圏出身者とは?

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最初に、漢字圏出身者、非漢字圏出身者とは、それぞれ、どのような人を指すのか確認しておきましょう。漢字圏出身者とは、主に、母語で漢字を使用する中国、台湾、韓国、シンガポールなどの出身者のことを指します。加えて、華僑や日本語を母語とする親の元で育った帰国子女なども含まれます。一方、非漢字圏出身者とは、上記以外の、母語で漢字を使用しない国の出身者を指します。英語圏出身者をはじめ、近年、日本国内で増加しているベトナム、ミャンマー、ネパール、インドなどの出身者も非漢字圏出身者に該当します。

 

日本語習得にかかる時間の違い

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漢字圏、非漢字圏出身者には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。最大の違いは、日本語を習得するまでにかかる時間です。ここでは、わかりやすく、日本語能力試験(JLPT)に合格するまでにかかる時間数で考えてみましょう。

一般に漢字圏出身者の場合、ゼロレベルから始めて日本語能力試験の最上レベルN1合格に到達するためには1〜2年を要するというのが目安とされています。一方、非漢字圏出身者の場合は、N1合格自体、ハードルが高く、到達できるのは1020%と言われます。しかも学習時間は、少なくとも漢字圏の倍を要すると考えられています。N2合格に到達するにも2年、N3到達には半年〜1年ぐらいが目安と言えます。

 

それぞれ、研修で気をつけるポイントは?

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では、漢字圏、非漢字圏の研修を考える場合、どのような点に気をつけて内容を構築したらよいのでしょうか。

 

漢字圏出身者に対する日本語研修で注意したいポイント

漢字圏出身者の場合、JLPTN1に合格していて、漢字の読み書きの能力はかなり高いという人でも「会話」が苦手という人は、かなり見受けられます。それは、JLPTが主に「文字・表記」「読解」「文法」「聴解」を測定する問題に偏っていることがあります。「漢字」が読めて意味がわかってしまう分、試験には合格できても、実際に会話をするという言語運用能力が十分に備わっていないということがあるからです。

そこで、漢字圏出身者の日本語研修では、漢字や文法の土台はあるので、それを実際に運用する能力をアップさせる研修内容を意識して多く取り入れるとよいでしょう。会話力に加え、場合によっては自然な日本語に聞こえるような発音練習が必要なこともあるかもしれません。

また、漢字圏の場合、例えば、中国と日本で、同じ漢字の熟語が異なる意味を表す場合もあるので、その違いを押さえるような内容も必要だと考えられます。

 

非漢字圏出身者に対する日本語研修で注意したいポイント

先述の通り、非漢字圏の場合、時間がかかるということを考慮して、研修内容を組み立てる必要があります。事前研修に時間を十分とって実施できるように準備することが大切でしょう。

研修目的も、N1合格を目指すのは現実的とは言えません。また、N2レベルでも、試験合格に必要とされる文法や語彙には日常の仕事には必要ないものも含まれているので、「日本語能力試験に合格すること」を目的にするのでなければ、それぞれのレベルで習得すると考えられている文法項目について、運用できるかを目安とし、語彙は実際に業務に必要なものを研修で盛り込むようにしたほうが現実的で効果的です。

また、中には口頭コミュニケーション能力が高い非漢字圏出身者もいるので、その会話力は維持しつつ、漢字も含めた読み書きなど、日常業務に使える日本語力をアップさせる研修を提供すると、すぐに役立つ研修になると思われます。

 

日本人社員側にも、それぞれの特性を知ってもらう

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漢字圏、非漢字圏、それぞれの特性と、業務に必要な日本語を見極めて、それぞれに必要な日本語研修を提供することが重要でしょう。また、日本人社員側にも、漢字圏と非漢字圏の出身者には、このような特性や違いがあることを知ってもらうための研修も必要です。相互の理解を深めることが、外国人社員が職場で力を発揮しやすい環境を作ることにつながり、チーム力もアップするでしょう。

 

執筆者:青山美佳
フリーランスライター・編集者 
成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。
主に、外国人の日本語学習、言葉とコミュニケーションにかかわる分野を中心に、日本語能力試験の問題作成・テキストの執筆、取材・記事執筆、編集・校正、文章添削などを行う。

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